会社分割における株主総会の決議要件と手続きの流れ
会社分割で株主総会は必ず必要?決議の要件と注意点
会社分割を進める際、「株主総会での決議は必要なのか」「どのタイミングで開催すればいいのか」と疑問に思われる経営者の方は多くいらっしゃいます。
会社分割は会社の重要な財産や事業を移転させる行為であるため、原則として株主総会の特別決議が必要です。
本記事では、会社分割における株主総会の決議要件、開催時期、具体的な手続きの流れ、そして実務でよくあるつまずきポイントまでを、司法書士の視点から詳しく解説します。
【結論】会社分割における株主総会の基本ルール
まず結論からお伝えします。会社分割において押さえるべき株主総会のポイントは以下の通りです。
- 原則として特別決議が必要(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)
- 吸収分割の場合、分割会社・承継会社それぞれで株主総会を開催
- 新設分割の場合、分割会社で株主総会を開催
- 簡易組織再編・略式組織再編の要件を満たせば、株主総会の省略が可能なケースもある
- 分割契約書または分割計画書の承認が株主総会の議案となる
- 効力発生日の前日までに株主総会を開催する必要がある
これらのルールを正しく理解し、適切なスケジュールで手続きを進めることが、スムーズな会社分割の鍵となります。
会社分割における株主総会の決議要件
原則は特別決議が必要
会社分割を行う場合、会社法では株主総会の特別決議による承認を原則としています(会社法第783条第1項、第804条第1項)。
特別決議とは、原則として以下の要件を満たす決議です。
- 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席
- 出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成
※上記の定足数については定款により3分の1以上の割合まで緩和することができますが、賛成要件を3分の2未満に緩和することはできません。
どの会社で株主総会が必要になるか
会社分割では、関与する会社それぞれで株主総会が必要になるケースがあります。
■ 吸収分割の場合
- 分割会社:株主総会の特別決議が必要(原則)
- 承継会社:株主総会の特別決議が必要(原則)
■ 新設分割の場合
- 分割会社:株主総会の特別決議が必要(原則)
- 設立会社:新たに設立される会社のため、設立時点では株主総会は不要
このように、吸収分割では2社で、新設分割では分割会社のみで株主総会を開催するのが基本です。
詳しくは新設分割と吸収分割の違いについての解説もご参照ください。
株主総会を省略できる「簡易会社分割」とは
簡易会社分割とは、会社分割により承継する資産の額が少ない場合(分割会社)や、対価として交付する株式等の額が少ない場合(分割承継会社)に、それぞれの株主総会の承認を省略できる制度です。会社への影響が軽微な会社分割についてまで株主総会の承認を求めると機動的な会社運営ができないため、設けられている制度です。
■ 簡易会社分割が使える要件
簡易会社分割の要件は、分割会社側と承継会社側でそれぞれ定められています。
【分割会社側】
分割会社が承継会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が、分割会社の「総資産額」の20%以下である場合(会社法第784条第2項、第805条)。
【承継会社側】
承継会社が吸収分割の対価として交付する以下1〜3の合計額が、承継会社の「純資産額」の20%以下である場合(会社法第796条第2項)。
- 対価として交付する承継会社の株式の数に1株当たり純資産額を乗じた額
- 対価として交付する承継会社の社債、新株予約権又は新株予約権付社債の帳簿価額の合計額
- 対価として交付する1.2以外の財産の帳簿価額の合計額
■ 簡易会社分割が使えない例外(承継会社側)
承継会社は、上記の要件を満たす場合であっても、次のいずれかに該当するときは株主総会を省略することができず、株主総会の特別決議が必要となります。
- 承継する資産より承継する負債の方が多い債務超過分割の場合
- 承継会社が交付する分割対価が、分割により承継する純資産額(承継資産から負債を控除した額)を超える場合
- 公開会社でない承継会社が、分割対価として承継会社の譲渡制限株式を交付する場合
- 会社分割に際し一定数以上の株主から反対する通知を受けた場合
株主総会を省略できる「略式会社分割」とは
略式会社分割とは、分割会社と承継会社の資本関係が90%以上の場合に、支配されている会社の株主総会の手続きを省略できる会社分割の制度です(会社法第784条第1項、第796条第1項)。資本関係が90%以上の場合には株主総会を開催したとしても承認されることが確実であるため、設けられている制度です。
■ 略式会社分割が使える要件
【分割会社の決議を省略できる場合】
承継会社が分割会社の議決権の90%以上を所有している場合(会社法第784条第1項)。
【承継会社の決議を省略できる場合】
分割会社が承継会社の議決権の90%以上を所有している場合(会社法第796条第1項)。
グループ内再編では、この略式会社分割を活用することで、手続きを大幅に簡素化できます。
■ 略式会社分割の例外
公開会社でない承継会社(株式譲渡制限会社)が、分割の対価として当該承継会社の譲渡制限株式を交付する場合には、「承継会社」の株主総会の決議を省略することはできません。
株主総会開催のスケジュールと流れ
株主総会を開催するタイミング
会社分割における株主総会は、効力発生日の前日までに開催する必要があります。
一般的なスケジュールは以下の通りです。
- 分割契約書(または分割計画書)の作成
- 取締役会の承認決議
- 事前開示書類の備置
- 株主総会招集通知の発送(総会の2週間前まで、非公開会社は1週間前まで)
- 株主総会の開催(効力発生日の前日まで)
- 債権者保護手続き(官報公告+個別催告、1か月以上)
- 効力発生日
債権者保護手続きと並行して進めることが一般的ですが、株主総会の承認がなければ分割契約は確定しないため、債権者保護手続きの開始前に株主総会を開催するケースが多く見られます。
株主総会議事録の作成と保管
株主総会が終了したら、議事録を作成し、本店に10年間保管する義務があります(会社法第318条)。
議事録には以下の事項を記載します。
- 開催日時・場所
- 議事の経過の要領およびその結果
- 出席した取締役・監査役の氏名
- 議長の氏名
- 議事録作成者の氏名
会社分割の登記申請では、この議事録を添付書類として提出する必要があります。
実務でよくあるつまずきポイント
【ケース1】反対株主が出た場合の対応
株主総会で会社分割に反対する株主がいた場合、その株主には株式買取請求権が認められます(会社法第785条、第806条)。
反対株主は、効力発生日の20日前から前日までの間に、会社に対して自己の株式を公正な価格で買い取るよう請求できます。
買取価格について協議が整わない場合は、裁判所に価格決定の申立てを行うことになります。
この手続きには時間と費用がかかるため、事前に株主への説明を丁寧に行い、理解を得ておくことが重要です。
【ケース2】定款に特別な定めがある場合
会社によっては、定款で株主総会の定足数や決議要件を通常より厳しく設定しているケースがあります。
例えば、「組織再編には議決権の4分の3以上の賛成が必要」といった定めです。
このような定款の定めは、会社法の規定より優先されるため、必ず事前に定款を確認しておく必要があります。
定款の確認や、必要に応じた定款変更の手続きについても、当事務所ではサポート可能です。
【ケース3】スケジュールの遅延リスク
株主総会の招集には法定の期間(原則:2週間前、非公開会社は1週間前)があり、さらに債権者保護手続きには1か月以上の期間が必要です。
これらを合わせると、分割契約締結から効力発生日まで、最短でも2か月程度はかかります。
決算期や許認可の更新時期との兼ね合いで、効力発生日を特定の日に設定したい場合は、逆算して余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。
当事務所では、会社分割の手続き全体をサポートしており、スケジュール管理から書類作成、登記申請まで一貫してお任せいただけます。
専門家に依頼すべきケースの判断基準
以下のようなケースでは、司法書士など専門家への依頼を強くお勧めします。
- 株主が多数いる、または所在不明の株主がいる
- グループ内再編で簡易・略式の適用可否を判断したい
- 許認可の承継が必要で、行政との調整が必要
- スケジュールがタイトで、手続きミスが許されない
- 反対株主が出る可能性があり、事前に対策を講じたい
- 定款に特別な定めがあり、解釈が必要
当事務所は、1,400社を超える登記実績を持ち、組織再編の登記を数多く取り扱ってきました。
行政書士事務所を併設しているため、許認可の承継手続きもワンストップで対応可能です。
株主総会の招集通知や議事録の作成、登記申請書類の作成まで、トータルでサポートいたします。
まとめ
会社分割では原則として株主総会の特別決議が必要であり、分割会社・承継会社それぞれで開催が求められます。
簡易組織再編や略式組織再編の要件を満たせば省略できるケースもありますが、反対株主への対応や法定期間の遵守など、注意すべきポイントは多岐にわたります。
スケジュール管理や書類作成に不安がある場合は、早めに専門家に相談し、スムーズな手続きを進めることをお勧めします。
組織再編の手続きでお悩みなら、無料相談をご利用ください
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初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
