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会社分割における分割計画書・分割契約書の記載事項と作成のポイント

会社分割の手続きで必ず必要になる「分割計画書」と「分割契約書」

会社分割を進めるにあたって、必ず作成しなければならない書類が分割計画書または分割契約書です。

新設分割では分割計画書を、吸収分割では分割契約書を作成することが会社法で義務付けられています。

 

「どちらを作ればよいのか」「何を記載すればよいのか」と迷われる経営者や担当者の方は少なくありません。

記載すべき事項は会社法で細かく定められており、記載漏れがあると株主総会の決議が無効になるリスクもあります。

 

この記事では、分割計画書と分割契約書それぞれの法定記載事項、実務上のポイント、作成時の注意点を詳しく解説します。


この記事でわかること

  • 分割計画書と分割契約書の違いと使い分け
  • 会社法で定められた法定記載事項の全体像
  • 記載漏れや誤りがあった場合のリスク
  • 実務でよくあるつまずきポイントと対処法
  • 専門家に依頼すべきタイミングの判断基準

 


分割計画書と分割契約書の違い

会社分割には大きく分けて新設分割吸収分割の2種類があります。

どちらの手法を選ぶかによって、作成すべき書類が変わります。

 

新設分割では「分割計画書」を作成

新設分割とは、事業の一部または全部を新しく設立する会社に承継させる手法です(会社法第762条)。

この場合、分割する会社(分割会社)が単独で分割計画書を作成します。

 

分割先の会社はまだ存在しないため、契約の相手方がいません。

そのため計画書という形式で、分割会社が一方的に定める形になります。

 

吸収分割では「分割契約書」を作成

吸収分割とは、事業の一部または全部を既存の会社に承継させる手法です(会社法第757条)。

この場合、分割会社と承継会社(事業を受け入れる会社)の双方が合意して分割契約書を作成します。

 

既存の会社同士が契約を結ぶため、契約書という形式になります。

原則として双方の株主総会での承認が必要です。

 

新設分割と吸収分割のどちらを選ぶべきかについては、新設分割と吸収分割の違いに関する記事で詳しく解説しています。

 


分割計画書の法定記載事項(新設分割の場合)

新設分割における分割計画書に記載すべき事項は、会社法第763条に定められています。

以下、必ず記載しなければならない代表的な項目を整理します。

 

1. 承継会社(新設会社)の商号・本店所在地・目的等

新しく設立する会社の基本情報を記載します。

  • 商号(会社名)
  • 本店の所在地
  • 事業の目的
  • 発行可能株式総数
  • 設立時の役員構成
  • その他新設会社の定款で定める事項

 

新設会社の設立登記に必要な情報をあらかじめ確定させます。

 

2. 承継する権利義務の内容

分割会社から新設会社に承継する資産・負債・契約・従業員などを具体的に特定します。

記載方法は大きく2つあります。

  • 個別列挙方式:資産・負債を1つ1つ明示する
  • 包括承継方式:「○○事業に関する一切の権利義務」とまとめて記載する

 

どの資産や負債が承継されるかを明確にしないと、後で債権者や取引先とのトラブルの原因になります。

実務では別紙として「承継権利義務明細表」などといったものを添付するケースが一般的です。

 

3. 新設会社が分割会社に交付する株式の数・割当て

新設会社は、分割の対価として株式を発行します。

その株式を誰に、何株交付するかを記載します。

  • 分社型分割(物的分割):株式は分割会社に交付
  • 分割型分割(人的分割):株式は分割会社の株主に交付(※一旦分割会社に交付し、直ちに分割会社の株主に取得させる方法)

 

型による違いについては、分社型分割と分割型分割の違いに関する記事で詳しく解説しています。

 

4. 新設会社の資本金・準備金の額

新設会社の設立時における資本金の額および資本準備金の額を記載します。

資本金額は、承継する資産の簿価や時価を踏まえて決定します。

 

資本金額は登録免許税の計算にも影響するため、慎重な検討が必要です。

 

5. 効力発生日

分割の効力が発生する日を明記します。

効力発生日に、新設会社が設立され、権利義務の承継が実行されます。


 

分割契約書の法定記載事項(吸収分割の場合)

吸収分割における分割契約書に記載すべき事項は、会社法第758条に定められています。

新設分割とほぼ同様ですが、承継会社が既存の会社であるため記載内容が一部異なります。

1. 分割会社・承継会社の商号および住所

契約を締結する両社の基本情報を記載します。

  • 分割会社の商号・本店所在地
  • 承継会社の商号・本店所在地

 

2. 承継する権利義務の内容

新設分割と同様に、承継する資産・負債・契約などを特定します。

承継会社の既存事業との区別が必要なため、より詳細な記載が求められるケースが多いです。

 

3. 承継会社が分割会社に交付する株式の数・割当て

承継会社が対価として交付する株式の数や割り当て方を記載します。

承継会社が既存の会社であるため、既存株主の持株比率への影響を考慮する必要があります。

 

4. 承継会社の資本金・準備金の増加額

承継会社が分割によって増加させる資本金・準備金の額を記載します。

承継会社の既存の資本金に上乗せされる形になります。

(※株式を交付しないときは記載不要です。)

5. 効力発生日

分割の効力が発生する日を記載します。

この日をもって、承継会社に権利義務が移転します。

 


実務でよくあるつまずきポイントと対処法

分割計画書・分割契約書の作成では、実務上さまざまな注意点があります。

ここでは、特に見落としやすいポイントを整理します。

 

【ケース1】承継する資産・負債の特定が曖昧

「○○事業に関する一切の権利義務」といった包括的な記載だけでは、後で「この契約は承継されたのか?」と争いになるリスクがあります。

 

■ 対処法

  • 資産・負債を別紙で一覧化する
  • 特に重要な契約は個別に明記する
  • 承継しない資産・負債も明示する(除外リスト)

 

【ケース2】許認可の承継可否が未確認

分割する事業に許認可(建設業許可、宅建業免許、産廃許可など)が必要な場合、許認可が承継されるかどうかを事前に確認しなければなりません。

許認可によっては、承継不可・再申請が必要なケースもあります。

 

■ 対処法

  • 許認可の種類ごとに承継可否を所管官庁に確認
  • 承継不可の場合は、再申請の準備期間を考慮してスケジュールを組む
  • 行政書士と連携して手続きを進める

 

当事務所では行政書士事務所を併設しており、許認可の承継手続きもワンストップで対応可能です。

詳しくは会社分割サポートサービスのページをご覧ください。

 

【ケース3】労働契約承継法への対応漏れ

分割によって従業員を承継する場合、労働契約承継法に基づく通知・協議義務があります。

この手続きを怠ると、従業員から異議が出て承継が無効になる可能性があります。

 

■ 対処法

  • 承継対象の従業員に対し、分割の内容を書面で通知
  • 従業員の理解を得るための説明会を実施
  • 異議申立期間(通知から2週間)を確保

 

【ケース4】税務上の適格要件が未確認

分割計画書・分割契約書の記載内容によっては、税務上の適格分割要件を満たせなくなるケースがあります。

適格要件を満たさない場合、譲渡損益課税等が発生する可能性があります。

 

適格要件の判定や税額の計算は税法上の専門領域です。具体的な税務処理については、顧問税理士または税理士法人へのご相談をお願いいたします。

 


分割計画書・分割契約書と類似する書類との違い

会社分割の実務では、分割計画書・分割契約書以外にもさまざまな書類を作成します。

ここでは、混同しやすい書類との違いを整理します。

 

分割計画書・分割契約書 vs 事業譲渡契約書

会社分割と事業譲渡は、どちらも事業を他社に移転する手法ですが、法的性質がまったく異なります

  • 会社分割:包括承継(資産・負債・契約が一括で移転)
  • 事業譲渡:個別承継(資産・負債・契約を1つずつ移転)

 

事業譲渡では、契約の相手方ごとに個別の同意取得が必要です。

一方、会社分割では原則として個別同意は不要です(ただし債権者保護手続きは必要)。

 

会社分割と事業譲渡の詳しい比較は、会社分割と事業譲渡の違いに関する記事をご覧ください。

 

分割計画書・分割契約書 vs 合併契約書

合併も組織再編の一種ですが、会社分割とは目的が異なります。

  • 会社分割:事業の一部または全部を切り出す
  • 合併:会社全体を統合し、一方の会社が消滅する

 

合併では「合併契約書」を作成しますが、記載事項は会社法第749条・第753条に定められており、分割契約書とは内容が異なります。

 


分割計画書・分割契約書の作成を専門家に依頼すべきケース

分割計画書・分割契約書は、会社が自ら作成することも法律上は可能です。

しかし、以下のようなケースでは専門家への依頼を強く推奨します。

 

1. 承継する資産・負債が多岐にわたる

不動産、知的財産、契約、従業員など、承継対象が複雑な場合は専門家のサポートが不可欠です。

記載漏れや誤りがあると、後で大きなトラブルにつながります。

 

2. 許認可の承継が必要

建設業許可、宅建業免許、産廃許可など、許認可が絡む場合は行政書士との連携が必要です。

当事務所では司法書士・行政書士が在籍しており、許認可手続きも同時に対応できます。

 

3. グループ内再編で税務上の適格要件を満たしたい

税務上の適格分割要件を満たすためには、分割計画書・分割契約書の記載内容が重要になります。

税理士と司法書士が連携して書類を作成することで、リスクを最小化できます。

 

4. 債権者や株主との調整が複雑

債権者保護手続きや株主総会の承認が必要な場合、手続きの流れや期間を正確に把握しなければなりません。

専門家のサポートがあれば、スケジュール管理や書類作成がスムーズに進みます。

 


まとめ

分割計画書・分割契約書は、会社分割の手続きにおいて最も重要な書類です。

記載すべき事項は会社法で細かく定められており、記載漏れや誤りがあると株主総会決議の無効や後のトラブルにつながるリスクがあります。

 

承継する資産・負債の特定、許認可の承継可否、労働契約承継法への対応、税務上の適格要件など、実務上の注意点は多岐にわたります。

専門家のサポートを受けながら、慎重に書類を作成することをお勧めします。

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