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会社分割における取締役会決議・書面決議の要否と実務上の手続きパターン

会社分割で取締役会決議は必要?不要?

会社分割を検討する際、「取締役会決議は必要なのか」「株主総会だけで進められるのか」と迷われる経営者の方は少なくありません。

実は、取締役会決議の要否は会社の機関設計によって大きく異なります。

 

この記事では、会社分割における取締役会決議の要否と実務上の手続きパターンを詳しく解説します。

自社のケースに当てはめて、どのような意思決定プロセスが必要かを確認していきましょう。

 

この記事で解決できること

この記事をお読みいただくことで、以下の疑問を解決できます。

 

  • 会社分割で取締役会決議が必要なケースと不要なケースの判別方法
  • 取締役会設置会社と非設置会社での手続きの違い
  • 取締役会議事録・書面決議の作成実務と記載事項
  • 分割計画書・分割契約書の承認タイミングと決議要件
  • 実務でよくある判断ミスと対策

 


会社分割における取締役会決議の位置づけ

会社分割は、会社法第757条(吸収分割)および第762条(新設分割)に基づく組織再編行為です。

その実行には、原則として株主総会の特別決議が必要です。

 

一方、取締役会決議の要否は、会社法に明確な規定がありません。

しかし、取締役会設置会社の場合は、株主総会の招集決定や分割計画書・分割契約書の承認について、取締役会での決議が必要になる場面があります。

 

取締役会設置会社と非設置会社の違い

会社の機関設計によって、意思決定プロセスは大きく異なります。

 

■ 取締役会設置会社の場合

  • 株主総会の招集決定は取締役会の専決事項(会社法第298条第4項)
  • 分割計画書・分割契約書の承認も取締役会で事前決議するのが一般的
  • 取締役会議事録の作成・保存義務あり

 

■ 取締役会非設置会社の場合

  • 取締役の過半数の一致で株主総会を招集可能(会社法第298条第1項)
  • 分割計画書・分割契約書の承認は株主総会のみで足りる
  • 取締役会議事録は不要だが、取締役の同意書面を残すことが望ましい

 


取締役会決議が必要になる具体的な場面

会社分割の手続きの中で、取締役会決議が必要になる主な場面を整理します。

 

【場面1】分割計画書・分割契約書の承認

取締役会設置会社では、分割計画書(新設分割)または分割契約書(吸収分割)を株主総会に付議する前に、取締役会で承認決議を行うのが実務の標準です。

この決議は法定されていませんが、会社の重要な財産処分行為として取締役会の承認を得ておくことが、後のトラブル防止につながります。

 

【場面2】株主総会の招集決定

取締役会設置会社の場合、株主総会の招集は取締役会の専決事項です(会社法第298条第4項)。

分割承認のための株主総会を開催する際は、必ず取締役会で招集決議を行い、議事録を作成する必要があります。

 

【場面3】事前開示書類の承認

会社分割では、一般的なケースの場合、株主総会の2週間前までに事前開示書類を本店に備え置く義務があります(会社法第782条・第794条)。

この書類の内容承認についても、取締役会で決議しておくことが望ましいとされています。

 

【場面4】効力発生日の最終確認

分割の効力発生日は、分割計画書・分割契約書で定めますが、実務上は株主総会後に最終確認を行います。

この確認を取締役会で行うケースもあります。

 


取締役会議事録・書面決議の作成実務

取締役会決議を行った場合、議事録の作成・保存が義務付けられています(会社法第369条第3項)。

ここでは、実務で使える議事録の記載例とポイントを解説します。

 

取締役会議事録の必須記載事項

会社法施行規則第101条第3項により、主には以下の事項を記載する必要があります。

 

  • 取締役会の日時および場所
  • 出席した取締役・監査役の氏名
  • 議事の経過の要領およびその結果
  • 議長の氏名

 

書面決議の活用

取締役会設置会社でも、定款で定めれば書面決議(会社法第370条)を利用できます。

特に、取締役全員が遠隔地にいる場合や、迅速な意思決定が必要な場合に有効です。

 

■ 書面決議の要件

  • 定款に書面決議を可能とする定めがあること
  • 取締役が議案を提案し、当該議案につき取締役の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたとき
  • 監査役全員が異議を述べないこと(監査役設置会社の場合)

 

書面決議を行った場合でも、議事録の作成は必要です。

一般的には「書面決議により可決」と明記します。

 


実務でよくある論点とつまずきポイント

当事務所では1,200社を超える会社の登記実績があり、組織再編登記も多数取り扱ってまいりました。

ここでは、実務でよく見られる判断ミスや対応のポイントをご紹介します。

 

【ケース1】取締役会非設置会社なのに取締役会議事録を作成してしまう

取締役会を設置していない会社では、取締役会決議は不要です。

にもかかわらず、慣習的に「取締役会議事録」を作成してしまうケースがあります。

 

取締役会非設置会社では、取締役の過半数の一致で足ります。

議事録ではなく、「取締役決定書」「取締役同意書」といった名称で、取締役全員の署名・捺印を得た書面を作成しましょう。

 

【ケース2】株主総会の招集決定を取締役会で行わず進めてしまう

取締役会設置会社では、株主総会の招集は取締役会の専決事項です。

この手続きを省略して株主総会を開催すると、株主総会決議の瑕疵となり、後に決議取消しの訴えを提起されるリスクがあります。

 

必ず、株主総会開催の前に取締役会を開催し、招集決議を行ってください。

 

【ケース3】分割計画書の承認を取締役会で行わず、株主総会のみで進める

法律上、分割計画書・分割契約書の最終承認は株主総会で行います。

しかし、取締役会設置会社では、株主総会に付議する前に取締役会で事前承認を得ておくことが、ガバナンス上望ましいとされています。

 

特に、分割計画書・分割契約書の内容が複雑な場合や、株主に十分な説明が必要な場合は、取締役会での事前承認を経ることで、株主総会の円滑な運営につながります。

 

【ケース4】書面決議の要件を満たさないまま議事録を作成してしまう

書面決議を行う場合、取締役全員の同意と監査役の異議が無いことが必要です。

一部の取締役の同意を得ないまま議事録を作成すると、決議の効力が否定される可能性があります。

 

必ず、書面決議の要件を満たしているか、慎重に確認してください。

 

会社分割の手続き全体の流れや必要書類については、分割計画書・分割契約書の記載事項と作成のポイントで詳しく解説しています。

また、当事務所では取締役会議事録の作成支援から登記申請までワンストップで対応しております。詳しくは会社分割サポートサービスをご覧ください。

 


株主総会決議との関係──どちらが先?同日開催は可能?

会社分割では、取締役会決議と株主総会決議の両方が必要なケースが多くあります。

ここでは、両者の順序と同日開催の可否について整理します。

 

原則:取締役会→株主総会の順

取締役会設置会社では、以下の順序で進めるのが標準的です。

 

  1. 取締役会で分割計画書・分割契約書を承認
  2. 取締役会で株主総会の招集を決定
  3. 株主総会で分割計画書・分割契約書を承認(特別決議)

 

同日開催は可能?

取締役会と株主総会を同日に開催すること自体は、法律上禁止されていません。

ただし、取締役会で株主総会の招集を決定する以上、取締役会を先に開催し、その後に株主総会を開催する必要があります。

 

実務上は、取締役会を午前中に開催し、株主総会を午後に開催するケースもあります。

ただしこれには株主全員の同意が得られている必要があり、そうでなければ株主への招集通知期間(原則2週間前、会社法第299条)を別途確保する必要があります。

 

簡易分割・略式分割の場合は?

簡易分割または略式分割の場合、株主総会決議が不要になるケースがあります。

この場合、取締役会決議のみで分割を実行できます。

 

簡易分割・略式分割の要件については、税理士や弁護士と連携して慎重に判断する必要があります。

 


類似制度との違い──合併・株式交換との比較

会社分割以外の組織再編手続きでも、取締役会決議の要否が問題になります。

ここでは、合併・株式交換との比較を通じて、理解を深めましょう。

 

合併の場合

吸収合併(会社法第749条)および新設合併(会社法第753条)でも、会社分割と同様に取締役会設置会社では取締役会決議が必要です。

合併契約書の承認、株主総会の招集決定、事前開示書類の承認など、手続きの流れは会社分割とほぼ同じです。

 

株式交換の場合

株式交換(会社法第767条)でも、株式交換契約書の承認や株主総会の招集決定について、取締役会決議が必要になります。

ただし、株式交換では資産・負債の承継が発生しないため、分割計画書のような複雑な内容承認は不要です。

 

事業譲渡の場合

事業譲渡は組織再編ではなく、契約による資産・負債の個別移転です。

取締役会設置会社では、重要な財産の処分または譲受けとして、取締役会の承認が必要とされるのが一般的です(会社法第362条第4項)。

 

株主総会決議が必要かどうかは、事業の重要性によって異なります(会社法第467条)。

 

会社分割と事業譲渡の詳しい違いについては、会社分割と事業譲渡の違いで解説しています。

また、株主総会の決議要件については株主総会の決議要件と手続きの流れをご参照ください。

 


専門家に依頼すべきケースの判断基準

会社分割における取締役会決議は、機関設計や分割のパターンによって要否が変わります。

以下のような場合は、司法書士などの専門家への相談をおすすめします。

 

  • 取締役会の設置有無が不明確、または過去に変更がある
  • 書面決議を活用したいが、要件を満たしているか不安
  • 簡易分割・略式分割の要件に該当するか判断が難しい
  • 分割計画書・分割契約書の内容が複雑で、取締役会での説明資料が必要
  • 過去に株主総会や取締役会の決議瑕疵でトラブルがあった

 

当事務所では、司法書士2名・行政書士2名・スタッフ3名の体制で、組織再編の手続きをトータルサポートしています。

取締役会議事録の作成から、株主総会の運営支援、登記申請まで、ワンストップでご対応いたします。

 


まとめ

会社分割における取締役会決議は、取締役会設置会社では必要になる場面が多く、特に株主総会の招集決定は法定の専決事項です。

分割計画書・分割契約書の承認も、取締役会で事前承認を得ておくことが、ガバナンス上望ましいとされています。

一方、取締役会非設置会社では取締役の過半数の一致で足り、取締役会議事録の作成は不要です。

 

自社の機関設計を正確に把握し、適切な意思決定プロセスを踏むことが、円滑な会社分割の実現につながります。

ご不明な点がございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

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